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ベント成形のあゆみと復活 -今なぜベント式なのか?-

射出成形機の歩み

射出成形機は、第三の物質といわれたプラスチックを成形加工する一つの方法である。 この着想はどこから生まれてきたのかをさかのぼって見ると果てしがないが、実質的にはSTURGISS(1849年)、PELOUZE(1856年)らによるダイキャストマシンの発明に源を発している。これがプラスチック成形加工分野に採入されてきたものと見てよいと考える。わが国で射出成形機が広く知られだしたのは、1950年頃プランジャ式射出成形機が国内で生産が始まった頃である。弊社も他のメーカー同様にプランジャ式射出成形機の設計製造に関与し、 第1図に示すような、基本的なプランジャ式射出成形機の形態を一応確立するに至った。
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プランジャ式からスクリュ式に変革

プラスチック製品の需要の拡大にともない原料の種類も多くなり、プランジャ式では射出圧力の不足・原料の完全溶融の不良等により、プランジャ式に替わる射出成形機の開発が求められてきた。当時の資料によると、1950年頃すでにヨーロッパ、アメリカでは射出成形機メーカーが、相次いでスクリュ可塑化式射出機構を採用し実用化されている事を知り、1956年弊社もスクリュ式射出成形機の開発に着手、1958年に完成した。開発した成形機では、当時プランジャ式では成形が不可能であった、無可塑エンビ(可塑剤3%)の成形をターゲットとした。 この事により、後に原料に対するスクリュディメンションが重要な要素を占めている事に気付かされた。ある技術資料によると、スクリュ式射出装置のスクリュには押出機用に設計されたスクリュに類似したのが基本であり、当時のスクリュ式射出成形機のL/Dは15~16が一般の設定値であった。そのL/D内の各ディメンションは各社任意の数値で設計されていた。(第2図)
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押出成形機と射出成形の成形品の相違から、スクリュデザインに若干の変化をもたす必要がある。その理由は、押出機の場合は対象原料が少なく、成形品が比較的ロングラン製造であるため、一本の専用スクリュデザインが要求されていた。射出成形機は数多くの原料を対象として、しばしば材料交換を行わなければならないので、押出機ほどの厳密なスクリュデザインを必要としない。それよりも、一本のスクリュで大方のプラスチック原料が成形できることが望ましい。つまり汎用成形機のスクリュにとって重要なことは、スクリュに広い適応性を持たせることである。 インラインスクリュ式射出成形機は「1958年のハノーバフェアにドイツのECKERT&ZIEGLERやANKERKなどから出品されて、その優秀性が広く認められた結果、射出成形機用スクリュデザインの基本となり、現在も多くの機械メーカーで採用されている。」と同技術誌に記載されている。これは40数年前の材料を対象とした方式、考え方であり、現在の材料とでは種類・物性共に大きな違いがある(第3図)。その後、近年になって高温度、耐熱性の樹脂原料が多くなり、ほとんどのメーカーのL/Dは20~21との数値となっているが、スクリュの各ディメンションは各機械メーカーにより相違がある。

ベント式成形機の起こり

我が国においてプランジャ式射出成形機が普及した期間は1950年~1958年と比較的短く、それに反してインラインスクリュ式射出成形機は1958年より今日に至るまで使用されている。この間、原料の多種多様な変化と共にスクリュディメンションも変化してきたが、それにも増して大きく変わったのは、成形機の駆動が油圧式から電動式に変わった事である。 ところが成形加工プロセスは、昔のプランジャ式射出成形機も、現在のスクリュ式射出成形も、 型閉-射出-計量-冷却-型開 という工程に変わりはない。成形機がプランジャ式からインラインスクリュ式への進化は、多様化するプラスチック原料に対処する事が大きな理由であった。また、多様化する原料に要乾燥樹脂が多くなってきた。このため予備乾燥を必要としないベント式射出成形機が国内で発表されたのは、1957年(昭和33年)頃であった。 従来のインラインスクリュ式射出成形機と異なる箇所は可塑化機構だけであり、成形加工のプロセスは全く同じである。ベント式のスクリュ・シリンダの断面の概略図を第4図に示す。
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1973年当社発売のベント式射出成形機「エクスタード」

図に示すようにベント式射出成形機は、ベント孔までを第1ステージと呼び、ベント孔より前を第2ステージと呼ぶ。ベント孔をシリンダの中間位置に設けた事である。その他は従来のインラインスクリュ式射出成形と同じである。写真1は、当時日本油機が設計製造を行っていた型閉力70t、スクリュ径35m/mのベント式射出成形機である。このベント式射出成形機は1963年頃から約15年間ほど、他のメーカーのベント式と共に広く一般に普及していたが、なぜか徐々にその姿を消し、今ではベント式射出成形機を知らない世代になっている。

今なぜ、ベント式なのか

ベント式射出成形機がなぜ普及しなかったのか。その理由はシリンダの中心に設けたベント孔より溶融樹脂の噴出(ベントアップ)現象や、色替えや樹脂替えに伴う時間と原料ロス、コンタミによる成形不良の発生率がノンベント式と比較してやや多い、などが考えられ、特にベントアップが最大のネックであった。しかし、数十年を経てこれらの問題点にも解決方法が見えてきた。まず、ベントアップの対策には、理想的な原料供給方法として、当社のハングリー成形法(特許)を採用した確実な原料供給を施し、樹脂換えやコンタミに対する対策は、長年のスクリュ設計の経験と実績から生まれた独自のスクリュデザインで対処することで、十分に解決できるのである。第5図、6図にノンベント式スクリュとベント式スクリュのL/Dの相違を示した。

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ベント式射出成形機の復活と展望

スクリュ式射出成形機がプラスチック成形加工に重要視され出した1958年頃のプラスチック原料と、今日使用されている多くの原料とでは比較にならないほど、種類・内容ともに大きく変化した。当時の原料になかった各種フィラー入りの複合原料も多くなっている。しかしながら原料の多様化に伴い、手間とコストもかかるようになってきた。ノンベント式射出成形機では、成形前の完全予備乾燥や、吸湿防止などの対策を施しても十分な水分やガスの除去がなかなか期待できず、なおかつ、最近の複合原料から発生する多くのガスやモノマー、揮発分などを乾燥工程で完全に排除する事は難しく、せいぜい表面水分のみの乾燥に止まっている。やはり、原料に含まれている不純物は、“溶融の状態から排出されるのが理想”と考える。ガスの排出装置も、モーターを使用した本格的な真空ポンプを利用せず、エアー源を採用した真空エジェクターで水分、ガス等の吸引を行っている。

おわりに:その魅力と効果

ベント式射出成形といえば、ベントアップトラブルの点で敬遠されているが、その反面多くのメリットを持っている。前述したように、当社でもデメリットとされた課題を一つずつ解決することに着手した。現在、電力事情は逼迫している。プラスチック成形にベント式を採用することで消費電力の大幅な節約が可能となり、またそのほかのトラブルも改善される。ベントアップは原料の供給方法で、また樹脂換えなどの問題はスクリュデザインで対処した。ガス、その他の不純物除去への工夫も施した。第1表は、18mmベント式可塑化ユニットとノンベントの成形品中の水分とモノマー含有量の比較結果である。本装置のメリットである、原料の乾燥不要から生まれる経済効果に期待している。
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-日本工業出版「プラスチックス」2011年10月号掲載 市川十四男著『ベント式射出成形の復活にかける』より-